令和6年10月30日の昼飯

本日、食したカップラーメンはこちら!

明星

中華三昧

 中国料理赤坂榮林

「トマト酸辣湯麺

爽やかな酸味と辛み

 
だぁぁぁぁぁぁ!

早速! いただきます!
 
この前食べた日清のサンラータンよりも、こっちの方がサンラータンに近いような気がするんだけど……
私だけでしょうか?
 
まぁ、所詮はカップ麺。
本物と比べたところで意味はない。
それぞれのカップ麺の味をそれぞれが勝手に楽しむのが本道というもの!
そう!これこそ!カップラーメン道!
 
ということで、今日は「意味はない」つながりのお話を。
 

kakuyomu.jp

 

  そこで、ミーキアンはヨメルに人間を借りたのだ。

 だが、ヨメルのもとにもまた、まともな人間などいなかった。

 というのもこの頃のヨメルは、人間と魔物を融合することに熱中していたのである。

 手に入った人間は、片っ端から融合加工実験の素材に使う始末。

 その数、何百……大方は失敗して魔物のエサとなっていた。

 だが、そんな中でも成功事例がいくらかは生まれる。

 成功した融合体の中に一人の少年がいた。

 その少年は、融合実験を受ける以前には一般国民ながら神民学校に通う優秀な学生だったという。

 そのためか、他の融合体の人間に比べると知能が高い。

 しかも、人間の記憶をいくらか残しているのだ。

「これは珍しい……」

 ヨメルはこの融合体の少年をすぐに気に入った。

 そして、ヨメルはミーキアンに見せびらかすかのように、この少年を貸し出したのである。

 そう、この融合体の少年の名は蘭丸

 蘭華、蘭菊の兄である。

 神民学校から失踪したと言われていたが、実は、融合加工の実験素材として魔の融合国に連れてこられていたのだ。

 

 人体改造された蘭丸は、ヨメル命令どおり小門を通り聖人世界の融合国へと向かった。

 しかし、いくら時間が経っても帰ってこない。

 ――逃げたのか?

 ヨメルは苛立ちを強めた。

 ミーキアンもまた、蘭丸に渡した手紙がどうなったのか心配になっていた。

 だが、そんなときであるミーキアンの元に半魔が訪れた。

 そう、エメラルダの手紙を持ってである。

 

 どうやら蘭丸はエメラルダに手紙を渡した後、人の住む町の中へと消えたようなのだ。

 という事は、いまだに聖人世界のどこかに身を潜めているという事なのだろう。

 だが、蘭丸は頭のいいやつだ、そうそう身元がばれるようなヘマはしない。

 ただ、これが普通の人間の事であればである。

 そう、今の蘭丸は、ヨメルに人体改造されている。

 ヨメルの言いつけを絶対に守るように作られているのだ。

 そんな蘭丸がヨメルの元へ帰るというの命令を無視したのである。

 今の蘭丸の頭の中には、ヨメルの声が反響し激痛が走っていることだろう。

 そのような状態で正常な行動をとれているのかどうかは怪しいものだ。

 もしかしたら、どこぞで野垂れ死んでいるかもしれない。

 だが、ヨメルはもうすでに蘭丸のことなどどうでもよかった。

 お気に入りのおもちゃが命令を守らない不良品と分かったのだ。

 どうせ捨てるおもちゃ。

 手間が省けたというもの。

 というのも、既にヨメルの興味は神と魔人の融合加工に代わっていたのである。

 

 エメラルダから届いた手紙を読むミーキアンは確信した。

 ――このエメラルダという女は私と同じだ。この戦い本質に疑念を抱いている。そして、なにより、命を尊ぶ。

 確かに、聖人世界と魔人世界は門を挟んで争っている。

 だから、命は尊いものだなどといった理念がただの理想論であることは重々承知している。

 そんな偽善を語ったところで、仲間が死ねば意味はない。

 降りかかる火の粉は振り払う。

 当然、その中で血が流れることは当たり前なのだ。

 だが、できることなら、その血は最小限に抑えたい。

 それは、偽らざる二人の気持ちだったのだ。

 

 それからのちも、ミーキアンとエメラルダは文通をかわした。

 この世界の事。

 この戦いの事。

 そして、生きるという事。

 二人は人と魔人という種を超えて少しずつだが理解し合えたような気がしていた。

 

 それを黙って聞くタカト。

 ミーキアンが、エメラルダを陥れようと手紙を差し出しているわけではないようだ。

 そもそも、いま言っていることが本当かどうかなど分かりはしない。

 だが、タカトには、それが真実であるように思えた。

 エメラルダがミーキアンを前にして見せる表情は、敵対する魔人に対するものとは全く異なる。

 それは、久しく会う友人との再会のように穏やかなもの。

 

 しかし、しかしである。

 それで納得しろと言われても納得はできない。

 

 確かに、無駄な争いを避けようと言う気持ちは分かる。

 分かるのだが、それによって、エメラルダの心と体はひどい仕打ちを受けたのだ。

 今でこそ明るく振る舞っているが、心の奥底では今だ酷くおびえている。

 それがタカトにはわかるのだ。

 分かるからこそ、そんな二人が思う理想など、ただの絵空事に思えてしまうのだ。

 ――そんな手紙さえなければ……

 だが、時間は戻らない。

 ――会う事さえなければ……

 いまさら言っても仕方ない。

 そんなことはタカトにだって分かっている。

 分かっているからこそ、タカトは黙って唇を固く噛みしめていた。

 

 ふと、窓から視線を戻したミーキアンはタカトに声をかけた。

「ところで、お前、食事はとったのか?」

 今まで忘れていたのだろうか、そばに置いていた皿を手に取るとタカトの前に突き出した。

 

 その皿には、タカトにとって見覚えがあるような、ないような、そんな怪しい塊が一つのっていた。

 よくよく見ると、それはトンカツのようにも見える。

 だが、そのトンカツは赤いのだ。

 いや、赤いなんて表現は生温い。

 毒々しい赤。

 いや、先ほどから漂よう赤い香りが、毒ガス並みに目を突き刺すのだ。

 

 目からこぼれ出す涙を手でごしごしとこすりながらタカトは尋ねた。

「なんだこれ?」

「道具作りを頑張っているお前に夜食だそうだ」

「夜食?」

「お前の連れ、ビン子とか言ったか? そのビン子がお前のために作っていた」

 健気なビン子ちゃんは、タカトが道具作りをしようとしていることにすぐに気が付いた。

 そんな頑張るタカトに少しでも役に立ちたいとミーキアンに厨房をかりて夜食を作ったのである。

 その様子を見ていたたミーキアンは、タカトを覗く口実欲しさに、ビン子が作った夜食を運ぶと言い出したのである。

 

 だが、その赤いトンカツを見るタカトの目は妙におびえていた。

 まさしく、これは迷惑コックのビン子特製『くれないの豚カツ』!

 ――やはり見たことがあると思ったはずだ……

 

 しかし、そんなことを知るはずもないミーキアンは一向に手を出さないタカトを不思議がった。

「お前、食べないのか?」

「いや……俺はいい……」

 というか、こんなもの食べられるか!

 だって、この『くれないの豚カツ』、辛いのなんてものじゃない!

 肉を包んでいるころもは全部、唐辛子!

 しかも、その唐辛子、ハバネロよりもめちゃくちゃ辛いキャロライナ・リーパーを使用しているのだ。

 その辛さはなんとハバネロの12倍という代物。

 触っただけでも皮膚がただれる激やばの唐辛子である。

 もう、そんな唐辛子など食べ物でも何でもないわい!

 しかも、ご丁寧に肉までキャロライナ・リーパーの辛いタレに付け込んでやがる! 

 そんなキャロライナ・リーパーをふんだんに使用して肉を油で揚げてるんや!

 いや、そもそも使用している肉も豚肉なのかも分かったものではない。

 だって、肉の味なんてわかんないんだよ!

 食べた瞬間、頭のネジがふっとぶ! いや、それどころか、意識が飛行艇にでも乗ってアドリア海の果てにまで飛んで行ってしまうかのようなのだ!

 

 どうやらミーキアンは先ほどから『くれないの豚カツ』が放つ攻撃的な匂いに興味を持ったようである。

 その口元には少々よだれが浮かんでいた

「うまそうな匂いがしているのに本当に食べないのか?」

 

 ――もしかして食いたいのか? こいつ……

「なら、お前が食ってもいいぞ」

 食えるものなら食ってみろと言わんばかりに、タカト意地悪そうに笑った。

 

 その言葉を待ってましたとばかりに嬉しそうな表情を浮かべるミーキアンが、トンカツをつまみ上げるとパクリと一口かじった。

 

 モグ……モグ……もぐ……

 なんかミーキアンの瞳が先ほど見せた少女のように潤んでいる。

 

「……なんかお前……瞳がキラキラしているぞ……大丈夫か?」

「綺麗……世界って本当に綺麗……」

「お前はフィオか!」

 すかさず突っ込んでしまったタカト。

 だが、目の前のミーキアンは一応、魔の融合国の騎士である。

 言っておくがとてもえらい魔人さまなのだ。

 

 だが、そんなミーキアンは目をキラキラさせながら少女のようにタカトに迫った。

「これ、美味いぞ! 本当においしいぞ! これ全部食べていいか?」

 

 ――あれ? そんなにおいしかったっけ? もしかして、ビン子のやつ料理の腕を上げたのか?

 なら一口、俺も食べてみよう。

「いや、それ! 俺の豚カツだから!」

 少々惜しくなったのだろうか、タカトはミーキアンから『くれないの豚カツ』を奪い取るとパクリと一口。

 

 パク

 モグ……モグ……もぐ……

 パタっ

 

 タカトの意識はアドリア海どころか真っ暗な地獄の底にまで吹っ飛んでいた……