
本日、食したカップラーメンはこちら!
マルちゃん
「赤いきつねうどん」
だぁぁぁぁぁぁ!

早速! いただきます!
天気は雨。
静かな雨音が続き、部屋の空気もどこか落ち着いている。
朝からスマホを眺めていると、値上げだの体調不良だの、気の重くなる話題ばかりが流れてくる。
気温差のせいか、なんとなく体もだるい。
そんな日常の小さな不調を抱えつつ、結局はいつも通り昼が来る。
そんな中で湯を沸かし、手に取ったのは
東洋水産 マルちゃん
「赤いきつねうどん」。
フタを開けると、あの甘めのだしの香りがふわりと広がる。
湯を注ぎ、待つ時間だけは、妙に静かだ。
つゆをひと口すすれば、やさしい甘みと旨みがじんわりと広がり、
少し重たかった気分がゆるんでいく。
ふっくらとしたおあげと、やわらかいうどん。
結局こういう“いつもの味”が、一番しっくりくる。
──まさに心機一転。
心機一転(しんきいってん):気持ちを新たにして、物事に取り組むこと。
大きな変化はない。
だが、小さなリセットはできる。
雨の音を聞きながら、
赤いきつねをすすり、
少しだけ気持ちを整える。
午後も、まあなんとかやっていこう。
ということで、今日はリセットつながりのお話を。
――わはははは、驚いて何も言えないだろうが!
タカトはさらに大きく息を吸い込み、腹に力を込める。
その瞬間。
ぷすっ――
ケツの穴から、気の抜けた音が漏れた。
それとともに、背後に立ち上がっていた気配が――霧散する。
――消えた。
もはや目の前の少年は、ただのガキ。
意味の分からぬ動きで粋がっているだけ。
その体から立ち上る生気は、戦士のものとは到底思えない。
いや――そこらの守備兵よりも、なお薄い。
―― 一瞬、アダムの気配を感じたが……気のせいか。
「お前……この状況で、よくもまあはったりをかませるものよ。
まあ、それはそれで、面白いがな!」
ガメルが、勢いよく棍棒を振り下ろす。
――えっ! はったりですと……
咄嗟に体が動いた。
かろうじて残っていた集中が、最後のひとかけらだけ繋がる。
なんとか、タカトは反射的に『至恭至順』で棍棒をいなした。
だが――
その瞬間、背中に嫌な感覚が走る。
――あれ……?
腕を見る。
剣を見る。
何も、変わっていない。
――生気……増えてなくね?
もう一度、体のあちこちを確かめる。
だが――
どこにも“満ち溢れている気配”などない。
つまり。
今の俺は――
いつも通り。
最弱www
――……これ、かなりまずいのでは……?
理解した瞬間、額から冷や汗がにじみ出た。
だが、そんなことはお構いなしに――
ガメルは、静かに棍棒を持ち上げる。
その動きには、一切の迷いがなかった。
慌てたタカトは、ガメルを制止しながら、もう一度、息をスーハースーハ。
「おじさま。少々お待ちくださいませ。何か手違いがございましたようでして……」
だが、何も変わらない。
もう一度。スーハースーハ。
やはり、何も変わらない。
……変わる気配すらない。
しびれを切らしたガメルの怒声が響く。
「何が手違いだ! 約束通り戦え! 小僧!」
上段に振り上げられた棍棒が――
「武技!兜砕撃!!」
その瞬間、空気が沈んだ。
これまでの一撃とは、次元が違う。
押し潰すような圧が空間を歪め、
逃げ場そのものを消し飛ばすかのように――
振り下ろされる。
逃げ場はない。
完全に、詰んだ。
というか――
死ぬ。
今のタカトに、どうこうできる余地は一ミリも残っていない。
集中力?
とっくにどこかへ置いてきた。
頭の中は、すでに真っ白だった。
だが――
人とは、追い詰められると意味の分からない行動に出るものだ。
タカトは、小剣を前に突き出した。
なぜなのか。
そんなの、本人にだって分からないwww
「びぇぇぇぇぇ! 神様ぁぁぁぁ!!」
当然、両目は固く閉じられていた。
この状況、当たるわけがない。
というか――狙ってもいない。
ただ――祈っている。
もう、戦っている感じではない。
むしろ――
完全に、現実逃避だった。
もっとも――
神に祈ろうが剣を突き出そうが、結果は同じだ。
ぺしゃんこになる未来だけは、やけにはっきりとしていた。
その刹那、ガメル後方の騎士の門より、小さな光が飛び出してきた。
それは一直線に空を裂き、ガメルの顔のすぐ横をかすめて飛び抜ける。
突如として目の前に現れた閃光に、ガメルは一瞬だけ視界を奪われた。
「なにっ!」
だが、すでに振り下ろされている棍棒は止まらない。
そのままの勢いで、タカトへと叩き込まれる。
がごんっ!
――あべしっ! 俺死んだ……
その瞬間――
世界が静まり返る。
ピコピコピコ……
『タカトはしんでしまった』
どこからともなく、あの間の抜けた旋律が流れてきた気がした。
――って! くそ! リセットや!
カチカチカチ!
……が。
そう思った瞬間、わずかに残っていた意識が、まだ途切れていないことに気づく。
恐る恐る目に力を込め、ゆっくりとまぶたを開けた。
――あれま! 俺生きている……
視線を落とすと、右脇の石畳が粉砕され、
地面ごと深く抉り取られた跡が、無惨に口を開けていた。
――なんじゃこれぇぇぇぇ!
ほんのわずかでも逸れていなければ、今ごろ自分もこの石畳と同じように、原形をとどめていなかっただろう。
遅れて、全身の血が一気に巡り出す。
止まりかけていた心臓が、激しく鼓動を打ち始めた。
顔を上げると、ガメルの体がわずかに傾いている。
先ほど騎士の門から飛び出した光を避けるように、ガメルは反射的に身をよじっていた。
そのほんの僅かなズレが、棍棒の軌道を逸らしていたのだ。
だが、運がよかったのは――ここまでだった。
ガメルの怒声が、タカトの内臓を揺さぶる。
「よくも小僧! この俺に傷をつけてくれたな!」
――はて…… 一体、何のことでしょうか……
ガメルの顔を見つめていたタカトは、視線を恐る恐る下へと落とす。
なんか、もう……嫌な予感しかしない。
そして――
そこにあったのは、あまりにも素敵な光景だった。
――えっ。
タカトの小剣が、ガメルの太ももに突き刺さっていた。
それも、深々と。めり込むように。
そう。弱小タカトが、魔人騎士に一撃を入れていたのだ。
しかも相手はガメル。
魔人世界でも屈強な戦士の一人だ。
そんな相手に、傷をつけている。
――は?
まさに会心の一撃。
快挙。
大金星。
歴史的瞬間である。
そして――
これが最初で最後だろう。
だって……
この後のことを考えると……どう考えても、無事で済むとは思えない……。
――あかん……これ、完全に怒らせとるやつだ。
愛想笑いをするタカト
「これは事故ですよ……事故……」
ガメルが棍棒を再び振り上げると、太ももから小剣が紫色の血を引きながら抜け落ちた。
小剣を手に勢いよく逃げ出すタカト。
もうその姿に先ほどまでの威勢はどこにもない。
というか、プライドもくそも何もない。
当然、その戦士ならざる態度にブちぎれるガメル。
「小僧! 逃げるのか!」
だが、タカトは振り向きざまにアッカンべー
「アホか! お前なんぞとまともに戦えるか!」
完全に怒髪天のガメル。
「お前に戦士としての誇りはないのか!」
「残念でしたぁ! 俺は戦士ではありませ~ん!」
と、脱兎のごとく逃げ回る。
ガメルは、大きく棍棒を振りかぶる。
その瞬間――
空気が、悲鳴を上げた。
圧が渦を巻き、地面を這うように広がっていく。
先ほどの一撃とは、比べものにならない。
重さも、密度も、桁が違う。
「奥義! 三面六臂!」
踏み込まれた右足が――
石畳を、踏み砕いた。
ひび割れが蜘蛛の巣のように走り、
足元から放射状に砕け散っていく。
その瞬間――
ガメルの棍棒の軌道が、増えた。
一つではない。
二つでもない。
三つ――
四つ――
五つ――
そして――六つ。
まるで虫の脚のように、
全方位から、叩き込まれる。
「タカト様!」
城門の陰から、可憐な少女が飛び出そうとする。
真音子だ。
だが――
その体を、紙袋の裸エプロンの男がとっさに押さえ込んだ。
「お嬢ダメです! アルダインの目があります!」
「離さんかい! このボケ!」
暴れる真音子を、イサクが強く抱き止める。
「タカト様に何かあったら――!」
「今は耐えてください!」
必死の制止。
だが、少女はなおももがく。
手を伸ばす。
届かない。
引きずられるように、暗闇へ。
「タカト様ァァァァァッ!!」
その叫びは――
魔物たちの咆哮の中に、かき消された。
逃げながら後ろを振り返るタカト。
――マズイ! 至恭至順!
身をひるがえし、初撃を剣で受け流そうとする。
剣の肌を滑っていく棍棒。
だが、その圧は――これまでとは比べものにならない。
まともに受ければ、小剣ごと体が砕けていた。
幸いにも、宙に浮いた体がかろうじて直撃を外す。
しかし――
次の瞬間。
逃がしきれなかった圧が、まともに食い込む。
タカトの体を――容赦なく弾き飛ばした。
吹っ飛んだ体が、そのまま一直線に城壁へ叩き込まれる。
むき出しの岩肌に――
ドゴッ!
衝撃が、体の芯まで突き抜ける。
体が、わずかにめり込む。
――ガハッ!
胃の中身が、逆流する。
息が、できない。
意識が、白く濁っていく。
二撃目の棍棒が、崩れ落ちたタカトめがけて振り下ろされる。
――よけないと……
本能が、警告する。
だが――
体が、動かない。
頭からの命令が、届かない。
指一本、動かない。
振り下ろされる棍棒の動きが、妙に遅い。
視界が、白くにじむ。
その白の中を――
ビン子との日々が、流れていく。
――これが……走馬灯ってやつか……
意識が、沈む。
――ビン子は……無事だろうか……
せめて、あいつだけでも――
まぶたの裏に浮かぶ、ビン子の笑顔。
その笑顔へ――
届かないと分かっていても、手を伸ばした。
(ほんと……俺って、弱すぎるな……)
視界が、白に塗り潰される。
「ほんと……俺って、弱すぎるな……」
白の中に、天井が浮かぶ。
清潔で、汚れひとつない白。
その中に――
伸ばされた手が、あった。
(え……と……俺は確か……)
窓からの風が、白いカーテンを揺らす。
風が、腕を撫でる。
ゆっくりと、握られた。













