令和5年11月2日の昼飯

本日、食したカップラーメンはこちら!

 

明星

チャルメラ  青森スタミナ源たれ にんにく甘旨醤油ラーメン」

 

だぁぁぁぁぁぁ!

早速! いただきます!

 

スタミナ源たれ」とは、なんぞやwww

 

 

ということで、定番の教えてグーグル先生のコーナーwwwパチパチパチwww

さっそくググってみると……なになに……

スタミナ源たれとは『青森県産大豆・小麦を使用した醤油をベースに厳選した青森県産のリンゴやにんにく、玉葱、生姜などの生野菜を使ったたれ』だそうだ。

 

青森とは反対がわにすむ西側の人間にとっては、あまりなじみのないタレである。

 

であるが……

 

この配合を見て、思い浮かぶものがある。

 

そう、焼き肉のたれ!

あっさり味の焼き肉のたれだと、こんな感じでまとまっているのが多いのではないだろうか。

さらにフルーティに、オレンジや梨、レモンなどを加えているものもある。

こってりにするならば、味噌やコチュジャンを加えていくのが定番なのかもしれない。

 

そう考えると、何となく味のイメージがついてきた。

だが、そうなると、そうなったで、店に売っている焼き肉のたれと何が違うのだろうかという疑問もわいてくる。

 

まぁ、一つの言い方としては「青森県産の」素材に、強くこだわったということなのだろう。

 

ということで、今日は「リンゴ」つながりのお話を。

 

kakuyomu.jp

 

 話を内地へと戻そう。

 コンビニの前のあぜ道では、いまだに泥水の中で四つん這いになっているタカトが目を輝かせてビン子を見上げていた。

「な!な! 俺、輝いてた?」

 先ほどまで蘭菊とダンスバトルを繰り広げていたタカトは、自分の踊りの出来栄えをビン子に確認していたのだ。

 よほどタカトは自分のダンスに自信があるようで、何度も何度もビン子に催促するのであるが、ビン子はあのタコのようなラジオ体操を見せつけられて、お世辞にも「素敵だったわよ」などと口が裂けても言えなかった。

 

 そんな泥だらけのタカトに、通りかかった坊主頭が声をかけた。

「お前……大丈夫か?」

 一見すると、水たまりの中で遊んでいるように見えるタカトであるが、その年齢は16歳。

 高校生が道の真ん中の水たまりで四つん這いになって泥まみれで目を輝かせていたら、やっぱり心がどこか病んでいるかのように思ってしまう。

 迷える子羊を救うのが仏門教徒の役目というもの……うん? なんか違うかwwwまぁいいやwww

 まるで薄汚れた地獄の餓鬼に慈悲でも施すかのように坊主は泥で汚れたタカトの鼻先にそっとハンカチを一枚差し出したのである。

 南無阿弥陀仏……神よ!仏よ!この者を救いたまえ! アーメン!

 

 

 この坊主の名はコウエンという万命寺の僧侶見習いである。

 万命寺? なんか聞いたことがあるような?

 そう、それは肩こりに効くというありがたい万札がいただけるお寺のことである。

 この万札、本当によく効くのだ。

 というのも、この万命寺、貧しい者たちの駆け込む病院としても有名なのである。

 そんな万命寺の周りには、町に住むことが許されないスラムの住人たちがひしめいていた。

 だが、そんなスラムにまともな食料などありはしない。

 そんなものだから、日々、ひもじさのために多くのものが餓死していくのである。

 その状況を目の当たりにする万命寺の僧たちは、一人でも多くの命を助けたいと寺の食糧をかき集めて、毎日炊き出しを行っているのだ。

 だが、食料が全く足りない……

 足りないというより、人がどんどんと増えてくるのである。

 万命寺に行けば、その日の糧にありつける……そんな噂が、さらにスラムを肥大化させていたのである。

 そんなものだから万命寺にある食料も、おのずと底をついてしまっていた。

 ならば! 街に行って食料を買ってくればいいではないか!

 だが、万命寺にはその金もないのである……そう……タカト達同様に超貧乏なのであるwwww

 そんなものだから、このコウエンが食料を得るために街に炭を売りに来ていたのだ。

 まるでなんか炭治郎みたいwww

 だが、炭治郎とは一味違うのだwwww

 そう、コウエンは単純に炭を売り歩かない。

 そんなことをしても得られるお金はほんのわずかでしかないのだ。

 少しでも多くの食料を持って帰らないと多くのものが飢えてしまう。

 だからこそ、まずは、炭が必要な工房に足を運ぶのである。

 そこでは赤々と燃える炉に大量の炭が放り込まれていく。

 えっ? 何当たり前のこと言ってんだって?

 まぁ確かに、ここで炭を売ってしまえばそれでお終いなのだ。

 だが、コウエンは工房から代金を受け取るのではなく、スキやカマを大量に受け取ったのである。

 それは以前、街にきたときに修理を依頼していたスキやカマの数々。

 そんな道具を一杯もって、今度は農村に赴くのだ。

 そこでは、直したスキやカマを食料と交換し、さらに同時に壊れて使えなくなった道具を回収していくのである。

 そんな壊れた鍬や鎌を再び工房に持ち込むと、また次回来るまでに修理をしておいてくれと依頼するのだ。

 えっ? 意味が分からない?

 そうだな……分かりやすく言えば、必要な人に必要なタイミングで必要なモノを提供すれば、より高く売れるということ。これ商売の鉄則!

 しかも、コウエンの目的は金ではない。いかに多くの食料を手に入れるかなのだ。

 だからこそ、農家の人たちが必要なものをより多く手に入れて食料と交換したのである。

 普通、農家の人に炭と食料を交換してくれと言っても「はぁ?なんで?」ってことになるだろうwwww

 工房を後にしたコウエンは、大量の食糧を背中に背負って万命寺に帰っていくのであった。

 そんな万命寺への帰り道……泥水の中に顔をしたたかに突っ込んでいるタカトを目撃したのである。

 

「ありがとう」

 タカトは受け取ったハンカチで顔をふこうとしたのだが、その鼻先にこびりつく泥の直前で、その手がピタリと止まってしまったのだった。

 というのも、そのハンカチの柄に見覚えがあったのだ。

 ――え~っと……どこで見たんだっけ……

 あっ! 思い出した!

「このハンカチは、あの時の!」

 そう!そのハンカチはあの忌々しい蘭華たちが働くコンビニでビン子のために……いや、第一の門外に出たことを権蔵にチクられないようにするために口止め料として買ってあげようとした銅貨5枚(50円)のセール品であった。

 

 一方、蘭華と蘭菊がタカトから金を盗んでいく一部始終を見ていたコウエンは厳しい表情で逃げていく二人の背中をにらみつけていた。

「おい! あいつら追いかけるか?」

 こう見えてもコウエン、腕には少々自信があるのだ。

 というのも、万命寺は貧しい者に医療を施す寺であるのと同時に、万命拳という拳法を修行するお寺でもあったのである。

 だから、そこで修行を積むコウエンのツンツルテンのおでこには、某アニメに出てくるクリリンのように丸い小さなあざが付いていた。

 ちなみにこの小さなあざ、戒疤かいはといい中国仏教において出家した者の証なのだそうだ。

 そして、その数は入門したての者がつける1個から、長いあいだ修行を積んだジジイがつける12個まであるそうなのである。

 で、入門したててのコウエンのおでこには、小さな2個の戒疤かいはがついていた。

 

「いや、いいよ……」

 と、タカトはハンカチをコウエンにつき返しながら、よっこらしょと立ち上がった。

 って、この「いいよ」どういう意味なんだよwww

 「二人を追いかけなくていいよ」なのか、それとも「ハンカチはいいよ」なのか分からんではないか!

 まぁ、タカトとしてはどちらの意味も含んでいる。

 ついでいうと、どうでもいいのだwww

 

 

 タカトが返そうとしていたハンカチには、しっかりとした四つ折りの折り目がついていた。

 確かに表面の柄は少し古ぼけて若干くすんでいる。

 とはいえ、そのピンと張ったハンカチの表面を見ると、コウエンが日ごろからこのハンカチをとても大切に使っているのは一目瞭然であった。

 そんな大切なハンカチでタカトの泥まみれの顔など拭こうものなら、あっという間に泥で汚れてしまう。

「泥は落ちないからな……」

 そう、泥汚れというものは、洗濯しても簡単に落ちないのである。これマジで……

 タカトはハンカチをそのままコウエンに突き返すと、泥で汚れた自分の顔を自らのシャツの裾でゴシゴシと拭き始めたのであった。

 まくれ上がったシャツからタカトのへそがのぞいている。

 そして、なぜか、それを見たコウエンが顔を少々赤くして目のやり場に困っていた。

 って、もしかして、お前も邪二じゃにさん系なのかwww

 

「もう!タカト! どうするのよそれ! その泥落ちないわよ」

 まるで、「それを洗うのは私なんですけど!」と言わんばかりのビン子は、かなり面倒くさそうな目で睨んでいた。

 だが、タカトは気にしない。

 まるで他人事のように……

「ティシャツを泥染したと思えばいいじゃんwww だいたい初めから、こんな感じだったしなwww」

 すでにティシャツに映るアイナちゃんの肌は日焼けでもしたかのようにまっ茶色w

 これは……さすがに何回も洗濯したとしても、色を落とすのは絶対に無理だわw

 もうビン子は、諦めましたと言わんばかりに大きくため息をついている。

「はぁ……もう、覚えてないですけど、最初、アイナちゃんのお肌は、真っ白だったと思います!」

 そんなビン子の突っ込みに、コウエンはプッとふきだした。

 どうやら、もうすでに蘭華と蘭菊を追いかける気は無くなったようである。

 

 そんなコウエンに別れを告げたタカトとビン子は家路についた。

 うっすらと紫がかった空では、いくつかの星が瞬き始めていた。

 薄暗くなった夜道、まだ何とかおぼろげに見えるあぜ道をビン子が嬉しそうなステップを踏みながら後ろ向きに歩くのだ。

「タカトwww また、とられちゃったねwww」

 そんなビン子の後を歩くタカトは頭に手を回し空を見上げていた。

「まぁいいんじゃね。あんな絵を飾っておいても腹は全然ふとらないしな」

「そうだねwww」

「もともとは、あのタンクトップだしな。だいたい『お尻ラブ』ってなんだよwww あんなダサイのなんかいらねぇってwww」

 それを聞くビン子は嬉しそうにクルリと向きを変えると、そっとタカトの横に並び肩を並べるのだ。

「そうだねwwww」

 

 そして、一般街にあるツョッカー病院の一室では、蘭華と蘭菊もまた嬉しそうに肩を並べて笑顔を浮かべていた。

「蘭菊。今日のリンゴはいい香りがするねwww」

「うん、そうだねwwwいい香りがするねwww」

 まるで、それはおいしそうな餌を前にしてそわそわとしている子犬のようである。

 丸椅子に座る二人の前には簡易な粗末なベッドが一つ横たわり、その上では母親の紅蘭が上半身を起こして、ニコニコとしながらリンゴの皮をむいていたのだ。

 

 ただ……これはいつもの様子ではない。

 というのも、蘭華たちが病室に見舞いに来ると、紅蘭は決まってベッドの中で臥せていた。

 それどころか、ひとたび咳が始まると決まって口を手で押さえ苦しそうに背を丸めるのである。

 そんな母の背中を必死にさする。

「お母さん! お母さん!」

「お母さん! 大丈夫! お母さん!」

 もう、それぐらいの事しか二人には出来ないのである。

 そして、紅蘭はそんな二人を気遣うかのように必死に笑顔を作るのだ。

「二人とも……心配しないで……お母さんは……大丈夫だから……」

 かつては白かったはずの病室のシーツが、度重なる紅蘭の血染めによって今や至る所に褐色の色をにじませていたのである。

 

 だが、そんな紅蘭の体調も今日に限って言えば、非常にいいようであった。

 切り分けられるリンゴの甘い香りがそんな病室の中に広がっていく。

「このおっきい奴! ウチが貰い!」

「あっ! 蘭華ちゃん! ズルい!」

 リンゴを奪い合う二人の様子を見る紅蘭は幸せそう。

 それはまるで病室の壁に貼り付けられた一枚の絵と同じような光景であった。

 その絵はタカトが蘭蔵から交換してもらった一枚の絵。

 その絵を奪い取った蘭華たちは、母親を元気づけるために病室のよく見える正面の壁に貼り付けたのである。

「これ見て! お母さん!」

「ウチらみたいやろwww」

 だが、その絵を見た瞬間、紅蘭は目頭を押さえた。

「お父さま……申し訳ございません……」

 そう、その絵の片隅には「蘭蔵」の名前が記されていたのである。

 

 窓から差し込む光が徐々に陰りだしはじめた病室の床の上では、ほの暗い影がゆっくりと成長していた。

 そんな影に目を落としながら、リンゴを食べる手を止めた蘭華と蘭菊は思うのだ。 

 ――このままこの時間が続けばいいのに……

 だが、二人の心の奥底にも、うっすらとした暗い影が育っていたのである……

 それは、何とも言えない不安……

 ――今月は何とか支払いができた……けど、来月はどうするんや?

 そう、入院代を払う事が出来なければ、即、病院を追い出されてしまうのだ。

 それは、すなわち母親の死を意味する。

 そんなことは幼子の蘭華や蘭菊でも十分に理解できていた。

 ――でも……どうすれば……来月もまた……お母さんは病院にいられるの?

 だが、そんなことよりも、もっと、もっと怖い考えが浮かんでくるのだ。

 ――お母さんの病気は本当に治るんだろうか?

 もしかしたら……

 もしかしたら……

 ――お母さんは……このまま……

 だが、そんな気持ちを母親に悟られまいと、二人は懸命に笑顔を作るのだ。

 まるでそんな不安を押し潰すかのように、手に持っていたリンゴをポイッと口の中に放り込んでムシャムシャと口を動かす。

「蘭菊。今日のリンゴはなんかしょっぱいね……」

「うん。蘭華ちゃん……なんかしょっぱいね……」

 

 そして、その頃……ようやく家に帰り着いたタカト達を待っていたのは、権蔵の怒鳴り声であった。

「このどアホが! また盗まれよってからに!」

 タカトが謝るよりも早く権蔵が怒鳴り声が道具屋の暗い部屋の中に響き渡った。

 しかし、酒に酔っているせいなのか権蔵の顔は少々赤い。

 そんな権蔵が座る机の上には、『超辛口 酒人』の酒瓶が中身を半分ほどに減らして立っていた。

 というか……こんな酒、いつ買ったのだろうか?

 だいたい、ウチのどこにそんな金があったというのであろうか?

 もしかして、爺ちゃんのへそくり?

 いやいや、違うのだ。

 そう……この酒は、今日の昼頃……タカト達がガラポン会場で激闘(?)繰り広げているころ、コンビニの女店主であるケイシ―=フーディーンがわざわざ権蔵に持ってきたものであったのだ。

 

「蘭華と蘭菊が大変お世話になっております」

 道具屋のドア先でケイシ―は権蔵に深々と頭を下げていた。

「これはつまらないものですが……」

 そして、持ってきた『超辛口 酒人』を手渡したのである。

 だが、ケイシ―は無言でそれを受け取る権蔵に後ろめたさを感じたのだろうか、そのまま言葉を続けた。

「……あの……あの二人がいただいたお金は、必ず私がお返しします……だから……」

 だが、権蔵は困った表情で酒瓶を見ながら頭をボリボリと掻きはじめた。

「まぁ……立ち話もなんじゃ……フーディーンさん……中に入らんか?」

 

 暖炉の前の古びたテーブルに座る二人は押し黙ったままだった。

 だが、そんな雰囲気に権蔵の方が先に音を上げた。

「まぁ……その……なんじゃ……フーディーンさん……金のことは気にせんでええ……」

 ハッと顔をあげるケイシ―。

「そうはいきません! 権蔵さんも、かなりお苦しいはず……」

 ハハハハハ

 権蔵は大きく笑うと続けるのだ。

「ワシは貧乏にはなれとる。大体、金を渡しよるのはタカトのボケが勝手にしとることじゃ。だから、アンタには関係ありゃせん。当然、あの蘭華ちゃんと蘭菊ちゃんも同じじゃ」

「でも……それでは……私の気が……だから、私がきっと……」

 それを聞く権蔵の顔から笑顔がスッと消えた。

「……だいたい……ワシらよりお前さんの方が大変じゃろが……」

 しかし、ケイシ―は黙ってうつむいたままだった。

「あの二人の幼子を育てならが、まだ旦那の事を想っておるんじゃろ……」

 瞬間、膝に置かれたケイシ―の手が強くギュッと握りしめられた。

「まだ……捕まらんからの……チ●コキラーの奴……せめて、奴だけでも捕まれば、お前さんの気も晴れるかもしれないのにな……」

 ケイシ―は、ついに堪えられなくなったのか、うつむくの口から小さな嗚咽を漏らしはじめた。

 それを見た権蔵はしまったという表情を浮かべ、必死に話題を変えようと思考を巡らせるのだ。

「まぁそのなんだ、金のことはな~んも心配せんでええ! タカトのボケをこき使う口実ができるだけラッキーというものじゃ!」

 ワハハハハハ!

 とわざとらしく大笑いする権蔵の前で、ハンカチで涙を拭くケイシ―が何度も頭を下げていた。

「ありがとうございます……ありがとうございます……」

 

 そんなケイシ―を送りだした権蔵は、やれやれと言わんばかりに自分の肩をトントンと叩いた。

 確かに権蔵自身、タカトの行いを誇らしくは思う。

 思うのだが……無骨な権蔵にとって、その行いを真正面から誉めるということは気恥ずかしくて簡単には出来なかったのである。

 ならば酒の力を借りてでもと思ったのであるが……

 ケイシ―が持って来てくれた酒を半分飲んだとしても逆に頭は冴え渡るばかり。

 そんな時にタカトが帰ってきたのだ。

「違うってwww爺ちゃんwww今回はwww怪獣に食べられたんだってwww」と、頭を掻きかきテヘペロと舌を出すwww

 こんなタカトのおチャラけた態度を目の当たりにすると、いつものような怒鳴り声しか出てこなかったのである。

 

「ウソをつくな!」

 少々赤くなった権蔵の真顔が一切表情を変えず、しかも抑揚のない一言でタカトをグサリと串刺す。

 

 へっ……?

 目が点になるタカトは訳が分からない。

 ――もしかして、じいちゃんにバレているとか?

 いやいや……そんなわけあるかいな……

 いったい誰がチクるって言うんだ?

 うん?もしかしてビン子か?

 ――お前なのか? ビン子! 

 というか、今一緒に外から帰ってきたところですよねwwwwビン子ちゃん。

 そんなビン子ちゃんが、どうやって権蔵じいちゃんにチクるっていうんですかいw

 ということで、タカトは隣に立っているビン子を肘でつつく。

 ――タスケテ! ビン子ちゃん! 

 

 すかさず横に立っていたビン子が頭を勢いよく下げた

「ごめんなさい、また、盗まれました。ごめんなさい」

 そう!失敗したときは素直に謝る!

 これが一番の解決法なのだ!

 そして、これができないのがタカト君www

 謝ることができない奴は、人生損するよwww

 

 それを聞くと権蔵の声は普通に戻った。

「そうじゃろが……まったく……」

 

 ――えっ?

 ――あれ?

 タカトビン子は互いに顔を見合わせ目をパチクリ。

 というのも、ここからもう一つ権蔵の「このドアホがあ!」というのを覚悟していたのである。

 それがどうだ、すでにもうそんなことはどうでもいいと言わんばかりに怒りの矛先をおさめたのである。

 ――じいちゃんどうしたのかな?

 ――もしかして……俺たちに隠れて、何かうまいものでも食ったんじゃないのか?

 

 

 そんな二人のコソコソ話が聞こえたのだろうか、権蔵はゴホンと一つ咳払いをしてワザとらしく嘆き始めたのだ。

「しかし、全額盗まれることはないじゃろうが……」

 そう、タカトのやっていることは悪いことではない……だが、道具を作るにも材料を仕入れる金が要るのだ。

 今は、なんとか権蔵の主である金蔵家に頭を下げて貸してもらっている。

 貸してもらっているのだが……タカトが稼いだ先から金をなくしてくるので一切返済ができていないのである。

 もう、こうなると普通、追加の融資などあてには出来ない。

 確かに金蔵家が融合加工職人の権蔵の腕を買っているのは間違いない事実である。

 だがしかし、権蔵の身分は奴隷、奴隷なのだ。

 この世界において奴隷の命は水よりも安いのである。

 いくら権蔵が優秀な奴隷であったとしても、その命を担保に得られる金はわずか。

 ならば、金蔵家が権蔵に貸す理由はもっと違うところにあるのかもしれない……そう、何かもっと大切な理由が。

 だが、当然ながら、そんなことは権蔵も知らない。

 だからこそ、いつ、金の返済を催促されるのかとビクビクしているのである。

 

 そんな嫌なことを考え始めると、どうにも酒の周りは早くなる。

 どうやら、やっと酔っぱらい始めてきた権蔵は愚痴をネチネチとこぼし始めだしたのだ。

「だからな……半分、いや半分とまでは言わん……せめて4分の1でも……そう!4分の1! そうすれば酒ぐらいはな……酒もここまで上等なものとは言わん! メチルアルコールでなければそれいいんじゃ! いや、メチルアルコールでもこの際構わん!」

 いやいやwwwメチルアルコールなんか飲んだら死ぬよwwww爺ちゃんwwww

 

 もう、このモードになった爺ちゃんなど恐れるに足らず!

 ということで、タカトは、あっけらかんと

「じいちゃん、大丈夫だってwww」

 と、頭を抱えてうつむく権蔵の前で胸を張るのである。

 

「なにがじゃ……」

 悲しいのか……嬉しいのか……不安なのか……とにかくいろいろな感情が渦巻いていて……すでに思考停止状態の権蔵は、魚が死んだような目でタカトを見つめあげていた。

 というか……コレ、完全に酔っぱらっているだけだよねwww

 

「じいちゃん! 俺、金貨1枚ゲットできる方法を知ってるぜ!」

「本当か!」

 それを聞いた権蔵の顔から不安や悲しみといった負の感情が一斉に吹き飛び、実に血色のいい顔の色にパッと戻ったのである。

 

 ちょっと得意げなタカトは体を斜めにしてわざと間をためて焦らすのだ。

 そんな仕草に権蔵は早く言え!と言わんばかりにソワソワしている。

 そして、満を持して体を正面に戻すと!

「道具コンテストで俺が優勝すれば、金貨1枚ゲットだぜ!」

 そう、タカトは権蔵に道具コンテストがあることを伝えたのだ。

「なっ、じいちゃん!簡単だろ!」

 

 それを聞いた途端、権蔵の顔が一気に老け込んだ。

 というか、魂が抜けたwww

 それどころか、まるで、そんな事かと言わんばかりに大きなため息をつくのである。そして、ボソリと一言……

「だいたい、お前には参加資格など全くないわい!」

 

 それを聞くタカトは驚いた。

 というのも、奴隷である権蔵ですら道具コンテストに出場できていたのだ。

 ならば、一般国民の身分である自分が参加できないわけがない!

 と思っていたのに……参加資格がないだと……

 なんですとぉぉぉぉぉぉおおおお!

 ということで、タカトは権蔵にかみついたwww

「どうしてだよ! じいちゃん! おかしいじゃないか!」

 

「道具コンテストは歴史あるコンテストじゃ。騎士様から推薦状を貰った者しか参加できんワイ! ボケ!」

 だが、それを聞いたタカトは瞳を輝かせた。

 というのも……

「それだったら、簡単じゃないか。じいちゃんが以前所属していた第7の門の騎士の一之祐様に推薦状貰ってきてくれよ! なあ!じいちゃん!一生のお願いだからさ!」

 しかし、権蔵はプイと横を向くと、またテーブルの上の酒を飲み始めたのだ。

「アホか。騎士様にそんな恐れ多いことお願いできるか!」

「そんなぁ……」

「そもそも、その昔、お前みたいな馬鹿が下らん道具を出品して一之祐様に恥をかかせたんじゃ! それ以来、拗ねた一之祐様はワシ以外の者には推薦状を出さなくなったんじゃよ!」

 それを聞くタカトは悔しそうに地団駄を踏んだ。

「くそ! どこのアホやねん、その馬鹿は! いっぺん死んで来い! ボケ!」

 だが、権蔵は酒を飲みながら静かに思う。

 ――それはお前のことじゃ! このボケ!

 

 第67話 激闘?怪獣大戦争? あっ!そのハンカチは! より