本日、食したカップラーメンはこちら!
徳島製粉
「金ちゃん きつねうどん」
だぁぁぁぁぁぁ!
ということで、ベッツの目の前にはオカマの猫ではなくて小汚い犬が一匹横たわっているではないか。
こんな犬でも、イジメれば気が晴れるというモノだ。
「お前! 汚ねぇな! 足が腐たじゃないか! 土下座しろ!」
って、犬は既に四つん這いや! アホ!
うずくまる母犬の側で子犬がうなり声をあげている。
まるで、それ以上母を傷つけるなと言わんばかりに小さき牙をむいていた。
危険を察したのか母犬は、子犬の首の後ろに噛みついて、ベッツから引き離そうと懸命に引っ張るが、倒れ込んだ体ではうまく力が入らない。
そのため子犬を思うように動かせないでいたのだ。
しかも、子犬は子犬で首に噛みつく母の口を邪魔するなといわんばかりに振りほどくと、今まで以上にベッツをにらみ威嚇をしはじめていた。
「何だ! このくそ犬! さっきからうるさいんだよ!」
ベッツもまた子犬をにらみつけると、右足を勢いよく浮かせた。
――まさか、ベッツの奴、あの子犬を蹴るつもりなのか!
先ほどからの光景はタカトにとって不愉快きわまりないものだった。
犬たちはただ道を歩いていただけなのに、邪魔者のように扱われる。
懸命に自分の命を生きているだけなのに、臭い臭いとからかわれる。
まぁ確かに、タカト自身も似たような経験をしている。
だからこんなことは日常茶飯事、慣れたことであった。
ならばこそ、この犬たちもアホな奴など相手にせず放っておけばいいと思っていたのだ。
だがしかし、目の前の母犬は傷つき動けない。
にもかかわらず、子犬を守ろうと必死に体を動かし続けている。
子犬は子犬で、幼いながらにその母を懸命に守ろうとしているではないか。
ベッツと子犬。どう考えても子犬に勝ちめんなんかあるわけがない。
だが、子犬は牙をむく。母を守るために牙をむき続けているのだ。
一体、こんな犬たちのどこが汚いというのであろうか。
母が子を思う気持ち……
子が母を思う気持ち……
それは人であれ犬であれ同じこと……
それを踏みにじる、ベッツの方が犬畜生以下である。
つい、タカトは後先考えずに大声をあげてしまった。
「ベッツ! お前の方がうるさいんだよ!」
子犬を守ろうとする母犬の姿が、自分の母のように思えたのかもしれない。
魔人に襲われた時、小さき自分はおびえて何もできなかった。
そのことは今も夢でうなされる。
もしかしたら、本当は子犬のように母を守りたかったのかもしれない。
いや、あの時できなかったからこそ、今、目の前の母犬と子犬をなんとしても守ってやりたいと思ったのかもしれないのだ。
そしてなにより、自分の目の前で、何もしていない子犬に向けられる理不尽な暴力が許せなかったのである。
タカト自身、自分の体が小突かれるのはいくらでも耐えられるのだ。
そんな痛みなど我慢すればいいだけのこと。
だがしかし、誰かが小突かれるのを見るのは心が痛むのである。
そう、自分が小突かれるよりも、はるかに心が痛むのだ。
そんなヒリヒリとした心の痛みは本当に……耐えがたい……
「テメエはニワトリか! このモヒカン野郎!」
今朝、鶏蜘蛛の騒動でさんざんな目に合ったベッツは、ニワトリという言葉にカチンときた。
――ニワトリと言う言葉なんか、しばらく聞きたくねえんだよ!
まさにトラウマ! カマドウマ!
トラウマに触られたベッツは顔を紅潮させると、カマドウマのようにピョンと勢いよくタカトのほうへと振り向いた。
「なんだと! タカトぉぉ!」
「子犬相手に吠えるなよ! うっせぇんだよ! このチキン野郎!」
「チキン! いまチキンっていったのか!」
カッチン!
怒りで肩を震わせながらベッツが荷馬車のタカトへと近づいてきた。
ベッツはただ単に子犬でうさを晴らそうと思っていただけなのだ。
それなのに、急にタカトが噛みついてきやがったのである。
いつもはへらへらとしているくせに、なぜか偉そうにどなってくるではないか。
しかも、その横にはビン子がタカトを少々驚いたような目で見つめている。
もしかして、今のタカトの事を男らしいとでも思っているのか。
へなちょこタカトがビン子の前で子犬を守ろうとイキがっているのが、ベッツにとって無性に腹が立った。
――あぁ! 今日は最悪だ!
「おい! タカト! イキるなよ! 荷台から降りてこい!」
「アホか! 降りろと言われて降りる馬鹿はおらんわい!」
「ならば、こっちから行ってやるよ!」
近づくベッツが荷台の柵へと手をかけた。
ひぃぃぃぃぃ!
先ほどまでの威勢はどこに行ったのか、一転、びびりまくるタカト。
というのも今のタカトにはベッツと闘うすべが全くないのだ。
カバンの中には『スカート
あるのは『スカートまくりま扇』だけなのだ。
だが、ベッツは男の子。
そう、スカートではなくズボンをはいているのである。
――どないせいちゅうねん!
もう、この状況、弱小タカトとベッツではおそらく喧嘩にすらならない。
ただ一方的にどつかれて終わることになるだろう。